題名 | マルチチャネルを利用したアドホックネットワークにおけるチャネル変更手法 |
著者 | *井ノ口 真樹, 植田 啓文, 中島 一彰 (NEC クラウドシステム研究所) |
ページ | pp. 192 - 198 |
キーワード | アドホックネットワーク, チャネル変更, マルチチャネル, 端末間通信 |
アブストラクト | マルチチャネルのアドホックネットワークでは,トラフィックの分布の変化に合わせ特定のチャネルが通信のボトルネックとならないよう,運用中に動的にチャネルを変更する必要がある.また,チャネルを変更した端末では,上位レイヤの通信に用いる経路の再計算が行われるため,チャネル変更時に通信が中断してしまう.そのため,多くの通信を中継する端末のチャネルを変更すると,当該端末が中継する全ての通信が中断してしまう.すなわち,マルチチャネルのアドホックネットワークにおいては,安定した通信をさせることが求められる端末が存在することを考慮しなければならない.本稿では,安定した通信が求められる端末を具体的に定め,それらの端末以外の端末に適切にチャネルを変更させることで,通信の中断を抑制しつつスループットを向上させる手法を提案する.また,シミュレーション評価により,端末間のスループットを最大で1.8 倍程度向上可能であること,通信中断数を半分以下に削減可能であることを確認した. |
題名 | 複数の評価指標を考慮したアトラクタ選択モデルに基づく無線ネットワーク選択手法 |
著者 | *若山 永哉, 小川 雅嗣, 柳生 智彦 (NEC クラウドシステム研究所) |
ページ | pp. 199 - 204 |
キーワード | モバイルネットワーク, 無線LAN, アトラクタ選択 |
アブストラクト | 無線ネットワークの利活用は近年,拡大の一途をたどっている.多様なネットワークを効率的に活用するためには,ネットワーク種別ごとの特性に加え,ネットワークの状態を把握しながら,最適なネットワーク環境を選択する必要がある.しかし無線通信システムでは,端末側からの手続きによって独立かつ自律的に接続先を決定するため,集中制御的なアプローチは現実的ではない. われわれはこれまでに,生物の環境適応メカニズムを数理化したモデルであるアトラクタ選択モデルを,無線ネットワークの接続先選択に適用する手法を提案してきた.他方で,端末の多くがバッテリ駆動であるため,消費電力,残存電力量に基づき制御を行えることが望ましい. 本稿では,評価指標が複数種存在する環境を想定した,ネットワーク選択におけるアトラクタ選択モデルの適用手法を提案する.本提案では,端末間で残存電力情報を相互に通知し,残存電力に基づいてパケット集約負荷の期待値が変動するよう,アトラクタ選択モデルを設計する.提案手法の有効性について,ネットワーク安定性,各端末の稼働持続時間およびスループットの観点から評価を行い,安定的に高いスループットを保ちつつ,従来提案と比較して2.5%程度稼働時間が向上することが示された. |
題名 | モバイルアドホックネットワークにおける継続的データ収集手法 |
著者 | *中山 侑紀, 天方 大地, 原 隆浩, 西尾 章治郎 (大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻) |
ページ | pp. 205 - 212 |
キーワード | アドホックネットワーク, 継続的範囲検索 |
アブストラクト | 本稿では,モバイルアドホックネットワークにおける継続的な範囲検索問題を考える.モバイルアドホックネットワークは既存の通信基盤が必要でないため,災害地などの通信基盤が利用できない環境での応用が期待されている.このような状況では,ある端末の周辺に存在するデータ,例えば,負傷者情報を継続的に収集することが考えられる.しかし,モバイルアドホックネットワークは通信帯域の制限や端末のバッテリ消費といった問題があり,また,各端末が移動するため,従来の有線ネットワークや無線ネットワークなどで用いられている既存手法をそのまま適用することは困難である.また,周辺データを継続的に収集するために,周期的に範囲検索を行う方法は効率的でない.そこで,筆者らは,クエリ発行端末が継続的に自身の周辺データを収集する効率的な手法を提案する.提案手法では,周期的にクエリを伝播せずに,端末の移動を考慮して動的にクエリを伝播する.また,クエリを受信した端末は,クエリに含まれる情報を用いてクエリ発行端末の現在位置を推定し,要求されたデータをその位置に向けて送信する.提案手法はデータ更新が起きる状況においても有効である.シミュレーション実験の結果から,提案手法はクエリ発行端末の周辺に存在する端末の所持するデータを効率的に収集できることを確認した. |
題名 | モバイル網のパケ詰まりを緩和する無線レイヤの状態を意識したTCP状態管理方式 |
著者 | *西川 由明, 野上 耕介 (NEC クラウドシステム研究所) |
ページ | pp. 213 - 216 |
キーワード | TCP, モバイル, パケ詰まり |
アブストラクト | エンドユーザが体感する品質であるQuality of Experience(QoE)が重要になっており、その一つとして遅延に対する注目が高まっている。特にモバイルでは「パケ詰まり」という言葉で代表されるように、遅延が長大化し体感的に通信不可能になってしまう問題が注目を集めている。様々なアプリケーションで利用されているTCPではHead of Line(HOL)ブロッキング問題による遅延の長大化が知られている。TCPでは順序通りにデータが揃っている場合のみアプリケーションにデータを渡すため、パケットロスで順序の飛躍が発生すると、再送されデータが揃うまでアプリケーションレベルの遅延が長大化する。さらにモバイル網ではハンドオーバ時などに数秒間バーストロスが発生することがある。TCPではこのバーストロスから回復する手段が送信間隔を指数的に増大させる再送処理のみとなるため、バーストロス終了後に即座に再送し送信を再開することができず遅延が長大化してしまう。本稿では、このバーストロス終了から送信再開までの無通信時間を低減する方式を提案する。TCPの状態遷移に新たな状態を追加し、プローブパケットの送信によりバーストロスの終了を検出する機能と終了後に即座に送信を再開する機能を実現する。TCPの通常の通信状態と新たに追加するプローブパケットを送信する状態の遷移条件を検討し、商用のモバイル網で有効に機能することを報告する。 |